わたしの知り合いの億万長者はみな、財産を持ったからといって豹変するようなことなく、逆に生来の特質が強調されてきている。貧乏な唐変木が巨万の富を築くと、億万長者の唐変木になるだけである
金は人をか変えない。金は人の本性を浮き立たせるだけである。貧乏なころに親切で太っ腹だった人は、巨万の冨を築いたあと、もっと親切でもっと太っ腹な人になる。逆に、貧乏なところにケチで締まり屋だった人は巨万の冨を築いたあとも、ケチでしまり屋な面をずっと持ちつづける。「クリスマス。キャロル」の主人公で吝嗇のエベニーザ・スクルージの名前を出せば、誰もがこの点を納得してくれるだろう。ただし、物語の中のスクルージは身を滅ばす前に、亡霊と精霊たちの訪問によって改心することができた。結局のところ、貧乏であろうと金持ちであろうと、いい人はどこまで行ってもいい人なのだ。そして、人間にとって重要なのは、貧乏なのか金持ちなのかという点ではなく、いい人かそうではないかという点なのである。