ウォーレン・バフェットの教訓 6

いったん交わした契約は反故にできないのだから、

サインをする前に

考慮すべきことはすべて考慮しておきなさい

契約書にサインした時点で取引が成立するという事実を、

ウォーレンは身をもって学んできた。

いったん署名してしまえば、

もう後戻りはできないし、

良い取引なのか悪い取引なのかを再考することもできない。

だから、サインをする前に、考慮すべき点は

すべて考慮しておく必要があるわけだ。

しかし、これは口で言うほど簡単ではない。

現物の契約書が鼻先に突き付けられたとき、

取引を成立させるということが第一義となってしまい、

しばしば健全な理性を吹き飛ばしてしまう。

重要なのは、署名を行う前に、最悪の事態を想定することである。

なぜなら、最悪の事態になる可能性が低くないからだ。

善意という名の道には、予測可能なトラブルが敷き詰められている。

旅立つ前に熟考を重ねておけば、トラブル対処のために

熟考を重ねる必要はなくなるだろう。

ウォーレンは89歳のローズ・ブラムキンから、

オマハにある〈ネブラカス・ファニチャー・マート(NFM)〉を買い取ったことがある。

これは家具類を扱う大型安売り店で、

一店舗ながらも多大なシェアを持っていた。

買収する際に、ウォーレンは契約書に非競争条項を入れ忘れた。

経営陣に残っていたミセス・ブラムキンは、数年後、店の変わりように激怒し、

〈NFM〉ときっぱり縁を切っただけではなく、〈NFM〉の向かいに新しい家具店を開き

〈NFM〉の商売に大打撃を与えた。

激しい競争にしばらく苦しんだのち、

ウォーレンはとうとう白旗を掲げ、新しい店を500万ドルかっきりで買い取ることに合意した。

二度目の契約のとき、非競争条項をきちんと入れておいたのは、

ウォーレンにとって幸運であった。

何しろ、ミセス・ブラムキンは103歳まで活躍しつづけたのだから。

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