相場投資格言 八木豹之巻

相場は毎日同じことにして、

同じことにあらず  

八木豹之巻

学問の神様で知られる菅原道真の漢詩に、

「古は今に同じからず、今は古に異なり」

という句がある。

この格言を残した猛虎軒は

道真公が祀られている北野天満宮に近い

浪花で生まれ育った教養人で、

猛虎軒のペンネームには

「この本を読めば、相場で、モウ コケン(もう、こけることはない)」

という意味が込められている。

ちなみに書名の「八木」は二つの文字を組み合わせて「米」と読む。

当時の人々は洒落者だったのだ。

猛虎軒が道真のこの漢詩を知っていたかは定かではないが、

この本『八木豹之巻』は同時代の

『八木虎之巻』『八木竜之巻』とともに、

安永2年に木版刷りの小冊子として江戸の版元が出版して

全国的なベストセラーになっている。

手元にある『八木豹之巻』の奥付を見ると編者は山崎金兵衛という人物で

住所は「江戸通本石町十軒店」とあるから、

ちょうど現在の日銀や「会社四季報」を刊行する

東洋経済新報社あたりでつくられた本である。

巻末の図書目録に『八木宝の市』『八木相場帳』『売買出世車』とあるから、

そのころ日本橋界隈の書店では、これら相場指南書を多数取り揃えていたことが窺える。

さて、猛虎軒のいう、

「毎日同じことにして、同じことにあらず」とは、

相場が停滞した閑散期の心構えである。

相場が動かなくなると誰もが退屈して

そのうち日々のチェックさえ怠るようになる。

なかには、もっと景気の良い話はないかと

他の市場に手を出して大けがをする人も数多い。

古今東西の相場名人は持ち合い相場からの転換点を的中させる

恐るべき洞察力の持ち主が多かった。

彼らに共通するのは些細な変化を見逃さない観察眼の持ち主で、

持久力に優れていることだ。

エリオット波動を考案したラルフ・ネルソン・エリオットは、

過去80年間の株価を丹念に観察した末に

波動論を構築した。

アナログな考え方のようだが、

システムトレード(自動売買)が全盛の時代だからこそ、

生身の人間の鋭い観察力が求められる。

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