ブルは時々儲ける
ベアも時々儲ける
しかしホッグは決して儲けない
ウォール街でブル(雄牛)と言えば強気相場の象徴で、
ブロードウェイに置かれたチャージング・ブルが有名だ。
このブロンズ像は1987年のブラックマンデー(株価大暴落)で
傷ついた市場の回復を祈願した彫刻家が制作して
89年に設置された作品で、
市場関係者のみならず誰でも触るだけで金運がアップすると言われている。
ウォール街にはほかにもこの彫刻の初代にあたる1900年制作のチャージング・ブルがあり
こちらは雄牛(ブル)とその腹を殴り飛ばす熊(ベア)がセットになっている。
製作者は不明だが資金を提供したのは当時の大物投機師で、
堂々とカラ売りが出来た時代のものである。
ウォール街の住人たちはこのモニュメントをマーケットの象徴として眺めていたが、
彼らの悪行が暴かれ金融恐慌の元凶として
金融筋が責められるようになると、
投資の殿堂に株価の下げを象徴するベアがいることは、
許されないということで撤去されたのだ。
この格言は当時のもので、
強気(ブル)も弱気(ベア)も判断が的確であれば、
どちらかが儲けることができるが、
単なる欲張り(ホッグ=豚)は欲と恐怖に振り回されて終わると戒める。
ウォール街のホッグは、(豚の)貯金箱に貯め込んだ小銭を使い果たすまで
やめられない人々なのだ。
カラ売りをする投機筋を、
熊に例えるのは17世紀にロンドンの金融街シティのロンバート・ストリートで言われ始めたことで、
当時の猟師がまだ捕ってもいない「熊の毛皮」を担保に、
前金として借金をしていたことに由来する。
日本でいう「捕らぬ狸の皮算用」である。
18世紀になると彼らが海を渡ってウォール街にやってきて、
ベア・ベイティング(クマと犬を戦わせる賭け)をはじめ、
「売り」から入る投機師のことをベアと呼ぶようになった。
また、初期のウォール街はこれらの家畜を売りに来た南部の農民たちが利益の一部を
株券に変えた場所でもある。
雄牛が強気の象徴なのは、
ロデオなどで彼らが知る家畜のなかで牛が最も強かったからだろう。