松下幸之助「一日一話」11月1日

人の世は雲の流れの如し

青い空に、

ゆったりと白い雲が流れていく。

常日ごろ、あわただしさのままに、

意識もしなかった雲の流れである。

早くおそく、

大きく小さく、

白く淡く、

高く低く、

ひとときも同じ姿を保ってはいない。

崩れるが如く崩れざるが如く、

一瞬一瞬その形を変えて、

青い空の中ほどを、

さまざまに流れてゆく。

これはまさに、

人の心、

人のさだめに似ている。

人の心は日に日に変わっていく。

そして、人の境遇もまた、

きのうときょうは同じではないのである。

喜びもよし、

悲しみもまたよし、

人の世は雲の流れの如し。

そう思い定めれば、

そこにまた人生の妙味も味わえるのではないだろうか。

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