「私はこうして一〇〇万ドルを賭けた」とか「あなたも百万長者になれる」といった書物は、
株式市場についての本の中で最も危険なしろものである。
『マネー・ゲーム』(アダム・スミス著)に出てくる言葉。
アダム・スミスは次のように書いている。
「『私は百万長者だ』とか、『私は機を見るに敏だから、私の有価証券総額は七桁になった』というような非常に大きなマークを胸にぶら下げた連中がいる。
この1〇〇万ドルという数字や、それは誰にでもできるかというキャッチフレーズの魅力はとてつもなく大きいので、
内容がほとんどないのに、『私はこうして100万ドルを賭けた』とか、
『あなたも百万長者になれる』というような本が売れるのである。
私はこういう本を収集するのを趣味にしているが、こんな書物は、株式市場についての本の中で最も危険なしろものである」と。
株式で大成功を収めることができるのは、実に奇跡的といってもいいほど幸運恵まれた人達である。
その人の成功の原因の八割以上は幸運以外の何物でもない。
その人のノウハウを、それほど幸運に恵まれていないと大多数の人が真似しても、同じように成功する可能性はほどんどゼロに等しい。
もちろん、相場で何度も失敗して相場道を研究し、その血ににじむような努力の結果生まれたノウハウは参考になるものが多いが、
たまたま素人投資家が幸運に恵まれて成功を収めた場合のノウハウは参考にならないばかりか、
むしろ相場を甘く見て、有害である可能性が強い。
相場が過熱すると、週刊誌などに「私はこうして資産を十倍に増やした」式の特集が組まれることも多いが、
あまり真似をしない方が身のためだ。