大きな視野と緻密なソロバン
この名言は作家の城山三郎さんが小説『百戦百勝=働き・考え五両』の中で、
モデルとなった山種証券創業者の山崎種二を表したものである。
小説は山崎種二(小説のなかでは豆二)の半生を描いたもので
米屋の丁稚から相場師として頭角を現し、
証券界に舞台を移してから数々も大相場で奮戦する様子が描描かれている。
コメ相場で山崎は得意の「売り(ツナギ売買)」を駆使した戦法で大勝し、
株式市場に舞台を移してからはスターリン暴落時のカラ売りを最後に「買い方」に方向転換して、
日本市場の牽引役を務め、
89歳で没した際に田中角栄が弔門駆けつけた逸話が残されている。
大きな視野とは、
カネとモノの動きであり、
ソロバンとは相場の節々ではじき出す採算だ。
山種は「世の中にソロバンほど怖いものはない」が口癖で、
のちに刊行して自伝のタイトルの『そろばん』(パンローリング)だ。
相場師は空想に浸ることなく実現に基づいている。
採算っても大勝負大勝負なのである。