講釈師、見てきたような、うそをつき
リーマンショックを切っ掛けとする金融機関で、
書店には大恐慌や不況に関する書籍が山積みなった。
仕事の関係ではじめは出てくる本を次々と買っていたがのだが、
あまりの点数の多さに数冊読んで投げ出した。
このような書籍が店頭を賑わすと相場の転換期も近いのだが、
それにしてもたくさんの本が出るものだ。
これらの本で思い出したのは80年代の投資のムーブで出版された『グランビルの投資法則』(ダイヤモンド社)という本だ。
情報の少なかった当時は著者のジョゼフ・グランビルをてっきり権威ある研究者だと思い込んでいたのだが、
その後、
刊行された本を読むとグランビルの正体は奇抜な投資はセミナーで市場予測を展開した予想屋で、
的中した予言の多くはグランビルの予測を信じた投資家の売買によるもだった。
グランビルは全米各地で投資セミナーを開催して人気の是長期には大地震の予言なども行っている。
当時のグランビルはモーゼの十戒の衣装を着て馬車に乗り登場してピアノを弾きながら奇抜な相場予測を展開した。
まるでノストラダムスのようだが、
ほとんどの予言は大ハズレに終わり数年後には誰も相手にしなくっている。
金融危機などが起こると必ずといってよいほど事前に暴落を予測したことを売りにする人物が話題になるが、
その典型が1929年の大暴落を的中させたロジャー・バブソンで、
じつは、バブソンは10年悲観論しか述べていなかったのだ。
評論家ならそれでも済むが、
投資家が万年前強気・万年弱気で儲けることは不可能だ。
アメリカではこのよう予想屋がたくさんいて日々の市場を賑わしているが、
市場はこのような雑音(ノイズ)でいっぱいだ。
相場の世界では「予想は止そう」が常識で、
この川柳はこのようなバカ騒ぎを囃したもので、
「素人に、よってたかって嘘おしえ」という川柳もある。
自分が強気のときに強気の意見を聞くと気分の良いものだが、
弱気の気配に包み込まれると強気の信念もぐらついてしまう。
このような人々も投げ売りが出尽くした時の押し込み目が、
絶好の買い場なのだ。