怒るな、威張るな、焦るな、腐るな、負けるな

これはナニワの職人や商人たちが呪文のように唱えていた文言で、

作家の藤木義一さんは『商人道』のなかで、

生粋の大阪人のなかにはこの5つの言葉の頭文字を並べた「オイ!アクマ」を

唱えてから仕事を始める人がいたという。

関西でこの文言は家訓から社訓まで幅広く使われていたらしく、

調べてみると単語の順番を入れ替えた「アオイクマ」や、

「負けるな」を「怠るな」に入れ替えて唱えた人もいるようで、

関西出身の相場師に伺ったところでは、

これらの文言は太閤さんの時代からあったのではないかという。

かつて秀吉は堂島の米相場を「馬鹿と相場に勝てぬ」と

その影響力を評したが、

江戸時代から堂島の米相場で決まった米価は、

”旗振り通信”と呼ばれる手旗信号で、

日本各地の相場街に配信された。

狼煙や手旗による情報通信は戦国時代から行われいたが、

正規ルートの飛脚便より安価で早く相場情報を入手できる

旗振りを考案したのは相場師の源助なる人物で、

この通信方法は瞬く間に米商人の間で普及した。

その通信速度は、堂島・神戸間を7分、

岡山20分、広島40分でつなぎ、

飛脚便で1週間をようした江戸にわずか8時間の驚異的な速度で

相場情報を伝えることができたという。

これまでたくさんの関西の相場氏にお会いしてきたが、

この時代から大阪の相場師の評価は高く、

北浜で失敗した相場師が兜町に渡り成功することはあっても、

その逆はほとんどないと言われていた。

大阪の相場師は粘りに粘り根気よく相場を張るので

関東の相場師は根負けしてしまうのだ。

相場の達人は、相場にスリルを求めたり、

派手な売買をすることもない。

達人は感情を制御する術を学んでいるのである。

「怒るな、威張るな、焦るな、腐るな、負けるな」は立派な相場教訓だ。

成績の芳しくないトレーダーはこの文言を唱えてみるとよいだろう。

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