好材料は鈍感、悪材料は敏感
この格言は「好事門を出でず、悪事千里を行く」
という孫光憲の「北夢粆瑣言」にある故事に由来するもので、
一般に「悪事千里」が知られるように、
市場は悪材料に対して過剰に反応する傾向がある。
一口に悪材料と言ってもその内訳は戦争から家電製品の欠陥までと幅広いが、
そのほとんどは「悪材料は買いの好機」とされている。
精神科医でヘッジファンドを運用するバートン・ビッグスは『富・戦争・叡智』
(日本経済新聞出版社)のなかで、戦場や大災害など、突然マーケットに襲いかかるブラックスワンを歴史的に検証したが、相場の先見力は恐ろしい。
悪材料と好材料が掃除に発生して長期間にわたり株式市場の材料とされたのが、
1995年1月17日起きた阪神・淡路大地震だ。
阪神淡路地区を襲ったマグニチュード7・3の阪神・淡路大地震は、
6400に以上もの尊い命を奪い、
その経済損失は約10兆円に達したといわれている。
僕はこのとき兜町の記者クラブに出入りしていたのだが、
日本じゅうが被災地の様子に釘づけになるなか、
市場関係者は震災地直後から建設関連企業の需要を期待して動き出し、
関連銘柄の多くが乱高下を繰り返し復興銘柄として囃された。
日経平均そのものは消費低迷などで大きく後退したが、
兜町で市場関係者の期待と興奮は冷めることなくマネーゲーム材料が尽きるまで続き、
このとき相場の本性を知った。
このようなとき鈍感力の出番なのだろう。
鈍重になることで骨太な相場師になれるのだ。
「五感の鈍さ」や「図に乗る才能」も昔から論じられてきたことで、
相場と鉱山経営で巨富を築いた古河市浜術(1832ー1903年)
は、相場の秘訣を「運・根・鈍」と言っている。
「鈍」とは鈍重という意味で、政治家と同様に相場も些細なことに神経質な人には向かない。
これは機械を無駄にしない「一期一会」田、
先手を打つことで動じない「深沈厚重」の精神に通じ、
図に乗ることの達人だった市浜術は値動きの激しいしい生糸相場で大勝ちしたことで知られている。