ウォール街は酔っ払っていたんだ。おかげで今は二日酔いだ
この名言はブッシュ元大統領が、2008年7月
にヒューストンで開かれた支持者の集会のなかで
サプライムローン問題について述べた言葉である。
隠し撮りされた映像がyoutubeなどの動画サイトを
通じて全世界に配信されたので、ご覧になった方も
多いと思う。事の重大さと比較してあまりにも軽率
な発言だったので、当時は各方面から非難の声があ
がったが、昨今はこれらの名言(謎言)が誕生する瞬間
を、リアルタイムで眺められる時代になっている。若
いころから飲酒運転の常習犯で、大統領辞任前に「アル
コール依存症を信仰で断ち切った」と告白していた
ブッシュだが、この発言はいくつかのジョークを交え
ながら「連中は酔っ払ったあげく、二日酔いってわけ。
問題は酔いをさますのにどれだけかかるかということ」
と続いた。市場関係者のみならず多くの投資家が熱狂
相場に酔い痴れていたのは粉れもない事実なのだが、
大統領と酒といえば、ケネディ大統領の父親ジョセフ・
ケイディは、禁酒法時代に酒の密売と数々の株価操縦
で富を築いたことで知られている。ジョセフ・ケネディは
初代証券取引委員会の委員長も務め厚顔で、ケネディを
起用したルーズベルトは「オオカミを捕まえるために
オオカミを使う。彼なら取引のからくりを何でも知っている」
と発言した。市場が混乱すると、さまざまな名言が生まれる。
つづく1月に開かれたダボス会議では、ライス米国務長官が
「我々は今、タービュランスの中にいる」と述べている。
金融市場の乱高下について、 乱気流と同様、自信の「フラクタル
理論」で説明できることを示したのは数学者のマンデルブロ
博士だが、皮肉にも学者出身の国務長官は、今回の破綻劇
を元同業者の理論で解説したわけだ。墜落する確率は
低いとわかっていても、がたがた揺れる飛行機に乗って気分の
いい人はいないだろう。不安がよぎっても乗客に逃げれる術はない。
市場はめったなことでは壊れないのだから、慌てず騒がず
ベルトをしっかり締めていればいい。慌てて脱出しようとすると
大怪我をする。乱気流を抜けるまで辛抱するしかない。