株券はあなたが所有者であること知らない
ユーモアのなかにドキリとさせるこのひと言は、アダム・スミスの『マネー・ゲーム』(1969年)の一節だ。
著者の本名はジョージ・グッドマン。
経済学の重鎮とは別人で、機関投資家の世界に精通した金融ジャーナリストである。
この本そこらの古本屋に行けば数百円で買うことができるのだが、
刊行当時はウォール街の内幕を暴いた衝撃作として、
全米ベストセラーの30週間にわたり第一位の記録を作った名著である。
グッドマンはこの本の中で「あなたの株券に対する片思いが、マゾヒストやナルシズムと引き起こす。
この感情がひどくなると、可愛さ余って憎さ100倍になりかねない」言いう。
自分が惚れ込んだ銘柄を可愛がる気持ちもわからなくもないが、
株券にあなたに喜びや落胆が伝わることはない。
こんな調子で日々が値動きを眺めていては、
儲かる相場も儲からない。
昨今は銘柄談義も盛んだが、相手は自分の売りたい株を褒めちぎり、買いたい株を貶めていると思うぐらいがちょうどよいのである。