地下鉄で通勤している連中の助言を、
〈ロールスロイス〉で乗り付けてきた連中が
ありがたく拝聴するような場所は、
ウォール街以外には存在しない
高い知性を備え、
大きな成功をおさめ、
人生で巨万の富を築いた事業家たちが、
自分で投資する金もないような
貧しい株屋の助言を受け入れてしまう状況に、
ウォーレンはつねづね違和感を覚えてきた。
それほどありがたい助言を顧客に与えられるなら、
なぜ株屋自身は全員金持ちになっていないのだろうか?
ひょっとすると、彼らは自分の助言で儲けられないからこそ、
他人に助言料を請求することで儲けようとしているのではないのか?
自分の金を使って自分を金持ちにしようとせず、
他人の金を使って他人を金持ちにしようとするような輩は、
疑ってかかったほうがよい。
助言を聞けば聞くほど株屋に手数料が転がり込む、
という仕組みが存在している場合は特に・・。
往々にして彼らの目的は、
他人の金を使って自分を金持ちにすることなのだ。
助言に従った結果、誰かが財産を失ってしまったら、
いったい彼らはどうするのだろうか?
助言を買ってくれる別の誰かを見つけてくるだけである。
ウォーレンは、
こうして株屋たちから成るウォール街の“誠実さ”に強い疑念を抱いており、
金融アナリストたちがまとめた事業予想には目もくれようとしない。
どのビジネス分野をとってみても、
個々の特殊要因が無視され、
あまりに楽観的な見通しばかりが記されているからだ。