悪い人と良い取引は出来ない
悪人はしょせん悪人であり、
悪い人と良い取引をしたいと思う方が間違っている。
世界には正直な善人がいくらでもいるのだから、
不正直な人とビジネスをするのは愚行以外の何者でもない。
「この人物は信頼するに足るのだろうか?」
と自問するようなはめに陥ったなら、
ただちに交渉の席を離れ、
パートナーにふさわしいもっと正直な会社を探すべきである。
飛行機から飛び出す寸前に、
パラシュートの開き具合が気にかかるようでは、
おちおちスカイダイビングなどやっていられない。
これと同じで、
共同事業を立ち上げる寸前に、
相手の誠実さが気にかかるようでは、
おちおちビジネスなどやっていられない。
現時点で信頼できないなら、
将来も信頼できるようにはならないだろう。
そんな相手を無理に信頼しようとする必要がどこにある?
この教訓をウォーレンが痛感したのは、
〈ソロモン・ブラザーズ〉証券の取締役を務めているときだった。
ウォーレンの警告にもかかわらず、
〈ソロモン〉は、
メディア界に君臨するロバート・マクスウェルとの取引を続けた。
東欧出身のマクスウェルはその綱渡り的な財政運営の手法から
”お騒がせチェコ人”と呼ばれていたが、
折りもあろうに不慮の事故で突然他界すると、
〈ソロモン〉は大混乱の真っただ中へ放り込まれた。
すでに大量の資金をマクスウェル帝国に投じていたからだ。
〈ソロモン〉はたちまち、
投下資金を回収するために奔走せざるを得なくなった。
法則は単純明快だ。
誠実な人には、
ふだんから誠実な行動をとる傾向が見られ、
不誠実な人には、その傾向が見られない。
両者を混同しないことが肝要である。