わたしのスーツは高級品だ。私が着るからしみったれて見えるだけで
どんな服を着ていようと、人間の個性透けて見えるもの。確かに、ウォーレンはしみったれている。
昔からずっとそうだったし、これからもそうありつづけるだろう。彼がしみったれなのは、金を長期
に渡って複利運用した場合、どれだけ価値がふくらむかはをしっているからである。有名な話だが、
ウォーレンは資産マネージャーだった青年時代から、百万長者になったかなりあとまで、旧式の<
フォルスワーゲン・ビートル>でオマハの街を走りまわっていた。新車一台分に相当する二万五千ドルを、
年率20%の複利で運用すると、20年後に受け取とれる額は95万843ドル。車一台が100万ドル
弱というのは、ウォーレンにとっては高すぎる買い物だったわけだ。彼が高級スーツを着始めたのもごく最近
のこと。年齢が60歳を大きく超えたため、残りの一生分のスーツ代を複利で運用しても、夜も眠れないほど
の高額には達しなくなったからである。